時刻:9月6日午前2:15

もう何日雨が降り続いているのだろう。気味の悪い夜だ。起きたのが遅いとはいえ、もう寝なくては。そう思いつつ歯を磨きながら、パソコンの電源を切った。口の中の泡を捨てようと部屋を出ようとした、その時!

黒く艶やかな光を放つ羽と、長い触角をもつ『ヤツ』がいた…。

ゴキブリだ

俺は階段を駆け降り、機関銃を…いや、掃除機を手にした。「ジャキィィ!」対ゴキブリ用のノズルをセットし、戦場へ…。

歯ブラシをくわえたままの俺は、夏なのに出しっぱなしの羽毛布団の上にいる『ヤツ』を見据える。そして冷静に、まずはコンセントだ。ヤツの近くにもコンセントはあるが、ここは廊下にあるほうを使おう。
最近掃除機を買い換えたようだ…。腕がなるぜ。いや、今はそんなことを言ってる場合じゃあない。
スイッチを入れるタイミングが難しい。音で逃げてしまうかもしれない。近づけてからボタンを押すべきか…。こんなときに『ゴキジェットプロ』があれば、、、くそ!迷ってる暇はない!!10センチまで間合いをつめ、俺は全てを賭けた。

ぶおおぉおおぉおおおお

これ以上パワーは出ないのか!?そして次の瞬間俺は戦慄を覚えた。ヤツはベッドの下へ駆け降りた。ベッドの下にはスキーの板電気カーペットがたたんで置いてある。暗い場所で物陰に隠れられたら、俺に勝ち目はない。だけど、だけど…
「負けるわけにはいかない!!」
俺は歯ブラシを投げ捨て、ベッドを20センチほどずらした。暗闇に光が差し込んだが、姿は見えない。次にカーペットを引きずりだし、広げて確認する。いない。

ゴゴゴゴゴゴ…

黒いスキーケースから、邪悪な何かを感じる。そっと横に動かすと、いる。敵意を剥き出しにするヤツに、俺はそっと銃口を向ける。

勝負は一瞬だった。

厭な音をたてながら、細い管を通り、地獄へ落ちていった……、、、。


気付けば部屋はめちゃくちゃ、汗だくで、しかも口の中にあった泡がない。まあいいさ。布団の上に落ちた歯ブラシを広い、洗面所へ。



epilogue
ここ数年、我が家ではゴキブリは目撃されていない。きっとこの大雨で水没した地域から逃げてきたのだろう。おそらく杉並あたりか…。

今、そうやって日記を読んでいる、アナタの後ろにも、、、、、